職場巡視では何を見る?中小企業が始めたい安全衛生の点検

私は消防士として様々な災害現場での活動に携わってきましたが、安全は一人ひとりの注意だけでは守れず、事故を防ぐための仕組みが重要だと感じてきました。

これは、会社の安全衛生にも共通します。

「これまで大きな事故は起きていないから、うちの職場は安全だろう」

そう考えている会社もあるかもしれません。

しかし、事故が起きていないことと、職場に危険がないことは同じではありません。通路に置かれた荷物、無理な姿勢で行う作業、不安定な脚立の使用など、まだ事故には至っていない危険が職場に潜んでいることがあります。

こうした危険を事故が起きる前に見つけ、改善につなげる方法の一つが「職場巡視」です。

目次

職場巡視は、事故が起きる前に危険を見つけるために行う

職場巡視とは、実際に職場を見て回り、設備、作業方法、作業環境、整理整頓の状況などを確認する取組です。

労働安全衛生法令では、一定の事業場に選任される安全管理者、衛生管理者、産業医について、それぞれ職場巡視に関する規定が設けられています。

ただし、すべての会社に、同じ担当者や同じ頻度による職場巡視が一律に義務付けられているわけではありません。必要となる安全衛生管理体制は、業種や事業場の労働者数などによって異なります。

一方、これらの選任義務がない小規模な事業場でも、事業主や管理者が自主的に職場を点検することには大きな意味があります。

厚生労働省関係資料でも、中小規模事業場における自主的な取組として、各部署の責任者などによる職場巡視を取り入れ、危険・有害な箇所、整理整頓、作業手順の遵守状況などを確認し、問題のある箇所を改善することが示されています。

安全衛生では、事故が起きた後に対応するだけではありません。事故や健康障害につながる可能性のある状態を早めに見つけ、改善していくことが重要です。

職場の危険はそこで働く人がよく知っている

職場巡視で重要なのは、目で見て確認することだけではありません。実際にその場所で働いている従業員から話を聴くことも必要です。

例えば、次のような質問が考えられます。

「最近、ヒヤッとしたことはありませんでしたか」
「作業しにくい、危ないと感じる場所はありませんか」
「事故にはならなかったけれど、改善してほしいことはありますか」
「忙しいときに、いつもの手順どおりにできない作業はありませんか」
「新しく入った人には分かりにくい作業はありませんか」

単に「危険な場所はありませんか」と尋ねるだけでは、「特にありません」と終わってしまいます。

脚立を使うとき、荷物を運ぶとき、機械を清掃するときなど、具体的な作業場面に沿って尋ねることで、管理者が気づいていなかった危険が見つかることがあります。

また、従業員から話を聴く際は、本人の不注意を責めないことも大切です。

報告したことで叱られたり、評価が下がったりする職場では、ヒヤリとした経験が共有されなくなってしまいます。「誰が悪かったのか」を先に考えるのではなく、「なぜそのような状況が生じたのか」を確認する姿勢が必要です。

見つけた危険は個人の注意だけで終わらせない

職場巡視で危険を見つけても、「今後は気をつけましょう」と注意するだけでは、十分な対策にならないことがあります。

例えば、通路に荷物が置かれていた場合、その従業員を注意するだけでなく、次のような背景を確認します。

・荷物を保管する場所が不足していないか
・一時的に荷物を置く場所が決められているか
・納品の時間帯や作業の流れに問題がないか
・整理整頓を担当する人が明確になっているか
・通路を確保できるような配置になっているか

職場巡視で危険を見つけた後は、リスクアセスメントの考え方も参考になります。

リスクアセスメントでは、職場にある危険性や有害性を洗い出し、事故が起きた場合の重大さと、事故が発生する可能性などからリスクを見積もり、優先順位をつけて対策を検討します。

対策を考える際は、まず危険な作業そのものをなくしたり、より安全な作業方法に変更したりできないかを検討します。そのうえで、設備の改善、作業手順の見直し、安全衛生教育、保護具の使用などを考えていきます。

「本人が注意すれば防げる」という考え方だけに頼らず、同じ危険が繰り返されない仕組みを整えることが重要です。

なお、リスクアセスメントの法的な位置づけは、業種や対象となる危険・有害要因によって異なります。特に、一定の化学物質を取り扱う場合には、事業場の規模や業種にかかわらず、リスクアセスメントの実施が義務となることがあります。

小さな会社でも、無理なく継続できる仕組みにする

職場の状況は、従業員の入退社、設備の変更、繁忙期、作業手順の見直しなどによって変化します。以前は安全だった場所に、新たな危険が生じることもあります。

特に小規模な会社では、最初から複雑な制度をつくる必要はありません。

例えば、月に一度、事業主や管理者が職場を見て回り、気づいた点を簡単なチェックシートに記録する方法があります。従業員から報告されたヒヤリハットについて、対応内容と改善状況を記録しておくことも有効です。

確認する時期を固定するだけでなく、次のようなタイミングで点検することも考えられます。

・新しい機械や設備を導入したとき
・作業方法や職場の配置を変更したとき
・新たな業務を始めたとき
・労働災害やヒヤリハットが発生したとき
・繁忙期に入る前
・新入社員や経験の浅い従業員が配属されたとき

重要なのは、問題を見つけるだけで終わらせないことです。

誰が、いつまでに、どのように改善するのかを決め、実際に改善されたかを確認します。すぐに対応できない場合も、応急的な対策を講じたうえで、今後の対応予定を記録しておくことが大切です。

まとめ

安全衛生は、製造業や建設業など、危険な作業が多い職場だけの問題ではありません。

事務所、店舗、介護施設などでも、転倒、腰痛、長時間労働、メンタルヘルス不調など、働く人の安全や健康に関わるリスクがあります。

職場を実際に見て、そこで働く人の声を聴き、見つかった危険を改善につなげる。こうした積み重ねが、労働災害を防ぎ、従業員が安心して働ける職場づくりにつながります。

安全を個人の注意や経験だけに任せず、会社として事故や健康障害を防ぐ仕組みを整えていきましょう。

一方で、安全衛生について「何を確認すればよいのか分からない」「危険な箇所を見つけても、どのように改善すればよいのか分からない」という事業主様も少なくありません。

セーフコア社会保険労務士事務所では、職場の状況や働く人の声を踏まえ、安全衛生上の課題の整理から、社内の役割分担、ルールづくり、従業員への周知・教育まで支援します。

労働災害が起きてから対応するのではなく、事故や健康障害を未然に防ぐ仕組みを一緒に整えていきます

中小企業の安全衛生と労災防止は、セーフコア社会保険労務士事務所にご相談ください。

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