従業員に法定時間外労働や法定休日労働をしてもらう可能性があるなら、会社の人数にかかわらず、原則として36協定の締結と届出が必要です。
「従業員が納得している」「残業代を払っている」「小さな会社だから」という事情だけでは、届出の代わりになりません。
この記事では、2026年9月12日時点の一般的なルールをもとに、締結前の代表者選び、届出、上限時間、日々の管理までを整理します。
36協定は、時間外・休日労働をさせる前提となる手続き
労働基準法では、原則として1日8時間・1週40時間が法定労働時間です。また、少なくとも毎週1日、または4週間を通じて4日以上の法定休日を与える必要があります。
この法定労働時間を超えて働かせる場合や、法定休日に働かせる場合は、労働者側と時間外・休日労働に関する協定を結び、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。労働基準法第36条に基づくため「36(サブロク)協定」と呼ばれます。
協定は、締結しただけでなく、届出をしてから法定時間外・休日労働を行わせるための効力が生じます。詳しくは厚生労働省「労働時間・休日」で確認できます。
会社の終業時刻を超えた時間と、法定時間外労働は分けて考える
所定労働時間が1日7時間の会社で1時間延長して8時間働いた場合、就業規則上は残業でも、原則として法定時間外労働にはなりません。一方、1日8時間以内でも、週の合計が40時間を超えれば法定時間外労働になることがあります。
変形労働時間制を適法に採用している場合は、特定の日・週の法定労働時間の考え方が変わります。「終業時刻を過ぎた時間」だけでなく、適用する労働時間制度と日・週の合計を確認します。
なお、36協定がない状態で法定時間外労働をさせた場合も、割増賃金の支払義務がなくなるわけではありません。届出と賃金支払いは別の義務です。
労働者代表は会社が指名しない
過半数労働組合がない事業場では、労働者の過半数を代表する人と協定を結びます。代表者は次の条件を満たす必要があります。
- 労働基準法上の管理監督者ではない
- 36協定を締結する代表者を選ぶことを明らかにして、投票・挙手・信任など民主的な方法で選ばれている
- 使用者の意向に基づいて選ばれていない
社長が指名した人や、親睦会の代表を自動的に代表者とする方法は認められません。厚生労働省の過半数代表者に関するQ&Aも、選出手続きを具体的に示しています。
原則は月45時間・年360時間
一般の業務では、時間外労働の限度時間は原則として月45時間・年360時間です。1年単位の変形労働時間制の対象者には、原則月42時間・年320時間という別の限度があります。
臨時的な特別の事情があり、特別条項を定める場合でも、一般の業務では次の上限を超えられません。
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計は2~6か月平均で月80時間以内
- 月45時間を超えることができるのは年6か月まで
「100時間まで働かせてよい」という安全基準ではありません。協定の範囲内でも、会社には労働時間を適切に把握し、健康を確保する責任があります。
建設業の災害復旧・復興、自動車運転業務、医師などには特例があります。該当業務は一般則だけで判断せず、厚生労働省の業種別案内を確認してください。
協定に定める主な内容
- 時間外・休日労働をさせる必要のある具体的な事由
- 対象となる業務と労働者の範囲
- 1日、1か月、1年の延長時間
- 法定休日労働の日数・始業終業時刻
- 対象期間、起算日、有効期間
- 特別条項を使う場合の臨時的な事情、手続き、健康福祉確保措置
「業務の都合上必要なとき」のような恒常的な理由ではなく、どのような臨時的事情を想定するのか具体化します。協定は事業場単位で締結するのが原則です。
届出後に毎月確認すること
| 確認項目 | 実務で見るもの |
|---|---|
| 協定の有効期間 | 協定届、更新予定表 |
| 個人ごとの時間外・休日労働 | タイムカード、PCログ、申告との差 |
| 単月・複数月・年の上限 | 勤怠集計、アラート設定 |
| 割増賃金 | 給与計算、固定残業代との差額 |
| 健康確保 | 面接指導の対象、休息、業務配分 |
36協定は、提出して終わる書類ではありません。勤務実績が協定の範囲に収まっているかを、給与計算前だけでなく月の途中でも把握できる仕組みにします。
長時間労働を個人の頑張りだけで吸収しないため、業務量、納期、人員配置、管理職の残業指示もあわせて見直しましょう。
セーフコア社会保険労務士事務所では、36協定の作成・届出だけでなく、勤怠集計、就業規則、残業代計算がつながる運用を支援します。
参考資料
制度・資料の確認日:2026年9月12日。本稿は一般的な労働時間制と業務を前提にしています。変形労働時間制、裁量労働制、適用除外・特例業務などは個別に確認してください。

