従業員を採用したら、健康保険・厚生年金保険だけでなく、労災保険と雇用保険の確認が必要です。
両者は「労働保険」と総称されますが、対象者と手続きは同じではありません。特にパート・アルバイトを「短時間だから対象外」と一括りにすると、加入漏れにつながります。
この記事では、2026年9月12日時点の加入要件・提出期限と、2028年10月に予定される雇用保険の適用拡大を整理します。
労災保険と雇用保険の違い
| 労災保険 | 雇用保険 | |
|---|---|---|
| 主な役割 | 業務・通勤による傷病等への給付 | 失業、育児休業、介護休業、教育訓練などの給付 |
| 対象 | 原則、雇用するすべての労働者 | 所定労働時間・雇用見込み等の要件を満たす労働者 |
| 保険料 | 原則、全額事業主負担 | 事業主と労働者が負担 |
| 個人ごとの資格取得届 | 通常なし | あり |
労働保険の成立手続きをしていても、雇用保険の対象者について資格取得届を出したことにはなりません。反対に、対象者がまだいなくても、労災保険の成立が必要になる場合があります。
労災保険は短時間のアルバイトも原則対象
厚生労働省は、労働者を1人でも使用する事業は、業種や規模を問わず原則として労災保険が適用されると案内しています。正社員、契約社員、パート、アルバイトといった名称は問いません。
業務中だけでなく、合理的な経路・方法による通勤中の災害も給付対象になり得ます。会社が加入手続きをしていなかったことだけを理由に、被災した労働者が一律に補償対象外になるわけではありません。
一方、法人の役員、同居の親族、請負人などは「労働者」に当たるかを個別に確認する必要があります。対象外の事業主等が労災補償を希望する場合には、特別加入制度を検討します。
雇用保険の加入要件は、2026年時点では週20時間
2026年9月時点では、原則として次の2要件を満たす労働者が雇用保険の対象です。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
パート・アルバイトでも要件を満たせば加入が必要で、本人の希望だけで加入しない扱いにはできません。昼間学生は原則対象外ですが、卒業後も継続雇用される予定がある場合など例外があります。
詳細は厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか」で確認できます。
2028年10月から週10時間以上へ拡大予定
雇用保険法等の改正により、2028年10月1日から、被保険者の週所定労働時間要件が「20時間以上」から「10時間以上」に変更される予定です。
現時点で週10時間以上20時間未満の従業員は、2026年時点では通常この改正による加入対象ではありません。ただし、施行に向けて契約時間と対象者を把握できるようにしておくと、切替時の漏れを防げます。改正概要は厚生労働省「雇用保険の適用拡大」に掲載されています。
初めて従業員を雇う会社の主な期限
一般的な一元適用事業では、主な手続きと期限は次のとおりです。
| 手続き | 提出期限 | 主な提出先 |
|---|---|---|
| 労働保険 保険関係成立届 | 保険関係成立日の翌日から10日以内 | 労働基準監督署 |
| 労働保険 概算保険料申告書 | 保険関係成立日の翌日から50日以内 | 労働基準監督署・労働局等 |
| 雇用保険 適用事業所設置届 | 設置日の翌日から10日以内 | ハローワーク |
| 雇用保険 被保険者資格取得届 | 資格取得日の属する月の翌月10日まで | ハローワーク |
建設業、農林水産業などの二元適用事業は、手続きの流れや提出先が異なります。複数事業所がある場合も、事業所単位の扱いを確認してください。厚生労働省の労働保険の成立手続案内で一般的な流れを確認できます。
採用時に確認する実務項目
- 雇用契約期間と更新の見込み
- 週の所定労働時間
- 学生かどうかと、例外に当たる事情
- 雇用保険被保険者番号の有無
- 複数の勤務先で働いているか
- 賃金台帳・出勤簿・労働者名簿の準備
- 業務中・通勤中の災害が起きたときの社内連絡先
資格取得後は、雇用保険被保険者証と資格取得等確認通知書を本人へ確実に渡します。雇用保険料の控除開始時期と給与計算の設定も確認しましょう。
加入手続きだけで終わらせない
労災保険は、事故が起きたときの申請だけでなく、事業主による法令の要旨・給付請求手続き等の周知も必要です。採用時に、安全ルール、事故・体調不良時の連絡、通勤経路を確認しておくと初動が遅れにくくなります。
社会保険の加入判定は、採用時の健康保険・厚生年金保険手続きで整理しています。
セーフコア社会保険労務士事務所では、初めて従業員を採用する会社の成立手続きから、個人ごとの資格取得、給与計算への反映まで支援します。
参考資料
制度・資料の確認日:2026年9月12日。本稿は一般的な一元適用事業を中心に整理しています。事業の種類、役員・同居親族の働き方、複数事業所の状況により取扱いが異なるため、個別に確認してください。

