従業員を採用するとき、労働条件通知書を「昔から使っているひな形のまま」で渡していないでしょうか。
労働条件の明示は、正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員にも必要です。書類の名称よりも、必要な事項を、契約を結ぶタイミングで正確に明示できているかが重要です。
この記事では、2026年9月12日時点の制度に基づき、2024年4月の改正内容と、2026年10月1日に予定されるパート・有期雇用労働者への追加事項も含めて確認します。
労働条件通知書と雇用契約書は何が違う?
労働条件通知書は、使用者が労働者へ労働条件を明示するための書類です。労働基準法第15条と労働基準法施行規則第5条により、契約期間、就業場所、賃金、労働時間、退職に関する事項などの明示が求められます。
雇用契約書は、会社と労働者が労働条件に合意したことを確認する書類です。実務では「雇用契約書兼労働条件通知書」として一体化しても構いません。ただし、双方が署名しただけで、法定の明示事項が不足していれば十分とはいえません。
厚生労働省のモデル労働条件通知書を、自社の就業規則や賃金制度と照合して使うと確認しやすくなります。
まず確認したい、書面等で明示する主要事項
厚生労働省の案内では、次の事項が書面による明示の中心です。制度の定めがある場合だけ明示する事項もあるため、自社の制度に合わせて確認します。
- 労働契約の期間
- 有期契約を更新する場合の基準と、更新上限がある場合はその内容
- 就業場所・従事する業務と、それぞれの変更の範囲
- 始業・終業時刻、休憩、休日・休暇、交替勤務など
- 賃金の決定・計算・支払方法、締切日、支払日
- 退職に関する事項(解雇事由を含む)
昇給に関する事項も明示が必要ですが、労働基準法上は必ずしも書面に限られません。ただし、「言った・聞いていない」を防ぐため、通知書にまとめておくのが実務的です。詳しい項目は厚生労働省「労働条件の明示」で確認できます。
2024年4月から追加された4つのポイント
2024年4月の改正で、次の明示が追加されました。
- 就業場所・業務の変更の範囲:雇入れ直後だけでなく、将来どこまで変更し得るかを示します。
- 更新上限の有無と内容:有期契約の通算契約期間または更新回数に上限がある場合に明示します。
- 無期転換を申し込める機会:無期転換申込権が生じる更新時ごとに示します。
- 無期転換後の労働条件:無期転換申込権が生じる更新時ごとに示します。
更新上限を契約締結後に新設・短縮する場合は、その理由を事前に説明する必要があります。詳細は厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」に整理されています。
メールやSNSで送れば交付したことになる?
労働者が希望した場合は、FAX、電子メール、Webメール、SNSのメッセージ機能などで明示できます。ただし、労働者が記録を出力して書面を作成できることが条件です。
会社の都合だけで電子交付に切り替えず、本人の希望を確認し、送信した内容と受領確認を残しておきましょう。閲覧期限の短いURLだけを送る方法や、必要事項の一部しか表示されない方法は避けます。
パート・有期雇用では追加の明示事項がある
パートタイム・有期雇用労働者には、共通の明示事項に加え、次の4項目を文書等で明示します。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 雇用管理に関する相談窓口
さらに2026年10月1日から、通常の労働者との待遇差の内容・理由などについて、説明を求めることができる旨の明示が追加される予定です。施行前後に雇入れ・契約更新を行う会社は、厚生労働省の改正案内で最新の様式を確認してください。
交付前に確認したい7項目
- 求人票、面接時の説明、通知書の内容が一致しているか
- 就業場所と業務の「変更の範囲」を実態に合わせて書いたか
- 有期契約の更新基準・更新上限を具体的に書いたか
- 固定残業代を使う場合、対象時間・金額・超過分の扱いを明確にしたか
- 試用期間中の条件が本採用後と異なる場合、その違いを示したか
- 就業規則・賃金規程と矛盾していないか
- 交付日、交付方法、本人の受領を記録したか
ひな形は出発点です。実際の勤務場所、シフト、賃金制度、転勤・職種変更の可能性を反映させて、初めて自社の通知書になります。
採用時の書類をまとめて見直す場合は、少人数の職場の5つの労務管理チェックもあわせてご覧ください。
セーフコア社会保険労務士事務所では、労働条件通知書・雇用契約書の確認、就業規則との整合、採用時の手続きまで、中小企業の実情に合わせて整理します。
参考資料
- 厚生労働省「労働条件の明示」
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」
- 厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」
- 厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」
制度・資料の確認日:2026年9月12日。本稿は一般的な制度と実務上の確認点を整理したもので、個別の契約や紛争について法的判断を示すものではありません。

