従業員を採用するとき、「まずは試用期間を設けて、合わなければ本採用しなければよい」と考える会社もあります。たしかに試用期間は、入社後の勤務態度や能力、職場への適性を確認するための大切な期間です。
しかし、試用期間中だからといって、会社が自由に解雇できるわけではありません。「試用期間だから大丈夫」と思って対応すると、あとから解雇トラブルになることがあります。
試用期間とは何か
試用期間とは、採用した従業員について、会社が業務への適性や勤務態度などを確認するための期間です。
面接や履歴書だけでは、実際の仕事ぶりまでは分からないことがあります。そのため、入社後の一定期間を試用期間として、仕事への取り組み方、協調性、基本的なルールを守れるかなどを見て、本採用するかどうかを判断します。
ただし、試用期間であっても、従業員として雇い入れていることに変わりはありません。単なる「お試し」ではなく、すでに労働契約は成立しているという点に注意が必要です。
試用期間中でも自由に解雇できるわけではない
試用期間中に「能力が足りない」「勤務態度に問題がある」と感じることはあります。しかし、それだけで直ちに解雇できるとは限りません。
試用期間中の本採用拒否や解雇にも、客観的に見て合理的な理由が必要です。また、その理由に照らして、解雇という判断が社会的に見ても相当といえる必要があります。
たとえば、「なんとなく合わない」「社風に合わない気がする」「思っていた人材と違った」というだけでは、理由として弱い場合があります。どの業務に支障があったのか、どのような注意や指導をしたのか、改善の機会を与えたのかを整理しておくことが重要です。
「14日以内なら大丈夫」という誤解
試用期間でよくある誤解が、「入社から14日以内なら自由に解雇できる」というものです。
たしかに、労働基準法上、試用期間中の労働者で雇入れ後14日を超えない場合には、解雇予告の規定が適用されない扱いがあります。つまり、一定の場合には30日前の予告や解雇予告手当が不要になることがあります。
しかし、これはあくまで解雇予告の話です。14日以内であれば、どんな理由でも解雇できるという意味ではありません。解雇そのものが有効かどうかは、理由の合理性や相当性が問題になります。
「14日以内だから大丈夫」とだけ考えてしまうと、解雇理由の説明や記録が不足し、トラブルになったときに会社側が説明に困ることがあります。
会社が確認しておきたい記録と指導
試用期間中に問題があると感じた場合、まずは事実を整理することが大切です。
たとえば、遅刻が多い、指示した業務が期限までに終わらない、報告・連絡・相談ができていない、注意しても同じミスを繰り返す、といった事情がある場合には、日時、内容、指導したこと、本人の反応を簡単でもよいので記録しておきます。
また、会社としては、いきなり「本採用しない」と伝えるのではなく、まずは改善してほしい点を具体的に伝えることが重要です。「もっとしっかりしてほしい」ではなく、「提出期限を守る」「報告は当日中に行う」「この作業手順を守る」など、本人が何を改善すればよいのか分かる伝え方が必要です。
指導した記録や改善の機会があることで、会社としても冷静に判断しやすくなります。
トラブルを防ぐために整えておきたいこと
試用期間のトラブルを防ぐには、採用時の書類や就業規則を整えておくことが大切です。
具体的には、試用期間の長さ、延長の有無、試用期間中または本採用しない場合の判断基準、解雇事由などを明確にしておきましょう。会社のルールがあいまいなままだと、従業員から「そんな説明は受けていない」と言われる可能性があります。
また、試用期間を必要以上に長く設定することにも注意が必要です。適性を判断するために必要な期間を超えて、従業員を不安定な立場に置くような運用は、問題になることがあります。


