無断欠勤が続く従業員への対応|解雇する前に会社が確認したいこと

従業員が連絡をせずに会社を休み、電話やメールにも応じない。

無断欠勤が続くと、ほかの従業員の負担が増え、取引先への対応や勤務シフトにも影響が出ます。事業主としては、「このまま出勤しないのであれば、解雇するしかない」と考えることもあるでしょう。

しかし、無断欠勤が続いているからといって、すぐに解雇できるとは限りません。

欠勤の理由や本人の状況を確認せず、会社から十分な連絡や出勤の求めを行わないまま解雇すると、後から解雇の有効性を争われる可能性があります。

この記事では、無断欠勤が続く従業員に対して、会社がどのような順番で対応すべきかを解説します。

目次

無断欠勤が続いても、すぐに解雇しない

無断欠勤は、会社のルールに反する行為です。

ただし、無断欠勤をしたという理由だけで、直ちに解雇が認められるわけではありません。

労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は、無効になると定められています。

無断欠勤を理由とする解雇が有効かどうかは、主に次のような事情を含めて判断されます。

  • 無断欠勤が何日間続いているか
  • 欠勤した理由は何か
  • 本人が会社に連絡できる状態だったか
  • 会社がどの程度連絡や出勤の求めを行ったか
  • 業務にどのような支障が出たか
  • 過去にも同様の問題があったか
  • 本人に事情を説明する機会を与えたか

よく「2週間無断欠勤したら解雇できる」と言われることがあります。

しかし、2週間無断欠勤しただけで、自動的に解雇が有効になるわけではありません。

欠勤日数だけで判断せず、会社として必要な確認と手続きを行うことが重要です。

まず本人への連絡と安否確認を行う

無断欠勤が発生した場合は、最初に本人へ連絡します。

電話だけでなく、メール、ショートメッセージ、社内チャットなど、普段使用している複数の方法で連絡を試みましょう。

確認する内容は、主に次のとおりです。

  • 現在の状況
  • 欠勤している理由
  • 今後出勤できる見込み
  • 会社への連絡ができなかった理由
  • 医療機関を受診しているか

本人と連絡が取れず、事故や病気の可能性がある場合には、緊急連絡先への確認も検討します。

ただし、緊急連絡先には必要以上に勤務状況や個人情報を伝えず、「本人と連絡が取れないため、安否を確認したい」といった必要な範囲にとどめることが大切です。

連絡が取れない状態が続く場合は、会社への連絡や出勤を求める書面を、本人から届け出られている住所へ送付します。

書面には、次の内容を記載します。

  • 無断欠勤が続いていること
  • 会社へ連絡してほしいこと
  • 出勤できない場合は理由を報告してほしいこと
  • 連絡期限
  • 連絡がない場合に会社が検討する対応

内容証明郵便や配達証明付き郵便など、送付した事実や配達状況を確認できる方法を利用すると、後から会社の対応を説明しやすくなります。

病気やメンタル不調の可能性も確認する

無断欠勤の原因が、本人の怠慢とは限りません。

事故や入院、家族の問題、職場の人間関係、ハラスメント、メンタル不調などが背景にある場合もあります。

特に、欠勤する前から次のような変化が見られていた場合は注意が必要です。

  • 遅刻や欠勤が増えていた
  • 表情が暗く、元気がなかった
  • ミスが急に増えていた
  • 周囲との会話が減っていた
  • 上司や同僚との関係に悩んでいた
  • 本人から体調不良や不眠の相談があった

日本ヒューレット・パッカード事件では、精神的な不調を抱えていた従業員の欠勤について、会社が受診や休職などの対応を十分に検討せず、無断欠勤として重い処分を行ったことが問題となりました。

最高裁は、従業員の精神的不調が疑われる状況では、会社として精神科医による診断や休職などを検討する必要があったとして、処分を無効と判断しています。

そのため、会社が本人の不調を把握していた場合には、単に「連絡せずに休んだから処分する」と考えるのではなく、次のような対応を検討する必要があります。

  • 医療機関の受診を勧める
  • 診断書の提出を求める
  • 就業規則の休職制度を確認する
  • 一時的な業務軽減や休職を検討する
  • 本人から職場での問題について事情を聞く

一方で、長期間の無断欠勤が続き、会社からの再三の連絡や出勤命令にも正当な理由なく応じず、本人に説明の機会を与えても改善が見られない場合には、解雇を有効とした裁判例もあります。

裁判では欠勤日数だけでなく、欠勤の原因、本人の対応、会社の働きかけ、業務への影響などが総合的に判断されます。

解雇を考える前に確認しておきたいこと

無断欠勤が続き、解雇を検討する場合には、少なくとも次の事項を確認します。

就業規則に無断欠勤や解雇の定めがあるか

就業規則に、欠勤時の連絡方法、無断欠勤に対する処分、普通解雇や懲戒解雇の理由が定められているかを確認します。

特に懲戒解雇を行う場合は、就業規則に根拠となる規定が必要です。

規定がある場合でも、無断欠勤の回数や期間、本人の事情に比べて処分が重すぎないかを慎重に判断しなければなりません。

自然退職・当然退職の規定があるか

就業規則によっては、「従業員が行方不明となり、一定期間連絡が取れない場合は、期間満了の日をもって退職とする」といった規定が設けられていることがあります。

このように、一定の事実が発生した場合に労働契約が終了すると定める規定は、自然退職や当然退職と呼ばれることがあります。

ただし、この規定があるからといって、無断欠勤が一定期間続いただけで、当然に退職扱いにできるわけではありません。

例えば、メールやSNSなどで本人と連絡が取れている場合は、「行方不明」や「連絡不能」という規定の要件を満たさない可能性があります。

会社から十分な連絡をしていない場合や、本人が病気などによって連絡できない事情がある場合も、慎重な判断が必要です。

自然退職として取り扱う場合には、次の点を確認します。

  • 就業規則に明確な規定があるか
  • 規定が従業員に周知されているか
  • 規定に定めた期間が経過しているか
  • 本当に本人と連絡が取れない状態か
  • 会社が電話や書面などで十分な連絡を試みたか
  • 病気や事故など、やむを得ない事情がないか
  • 本人に就労する意思があるか

自然退職は、解雇の手続きを避けるために形式的に利用できる制度ではありません。

就業規則の文言や実際の状況に合わないまま退職扱いにすると、後から「労働契約は終了していない」として争われる可能性があります。

会社から十分に連絡したか

会社から複数回連絡を行い、欠勤理由の報告や出勤を求めたかを確認します。

本人が会社からの連絡を受け取りながら、正当な理由なく無視し続けている場合は、処分を検討する事情の一つになります。

一度電話をしただけで連絡を諦めるのではなく、電話、メール、書面など、複数の方法を使うことが重要です。

本人の言い分を確認したか

本人と連絡が取れた場合は、欠勤理由や連絡できなかった理由を確認します。

会社側の判断だけで処分を決めるのではなく、本人に説明や弁明の機会を与えることが大切です。

特に懲戒処分を行う場合は、就業規則に定められた手続きがあるかを確認し、その手続きに沿って進めましょう。

業務にどのような影響が出たか

無断欠勤によって、実際にどのような支障が出たのかを整理します。

例えば、次のような影響が考えられます。

  • ほかの従業員が急きょ代わりに勤務した
  • 勤務シフトを変更した
  • 納期や業務の進行に遅れが出た
  • 取引先への対応ができなかった
  • 代替要員の手配に費用がかかった

単に「会社に迷惑をかけた」と記録するのではなく、具体的な事実を残すことが重要です。

・解雇以外の対応を検討したか

無断欠勤の状況によっては、次のような段階的な対応が考えられます。

  • 口頭または書面による注意
  • 始末書や事情説明書の提出
  • 出勤命令
  • 戒告や減給などの懲戒処分
  • 医療機関の受診
  • 休職制度の利用
  • 配置や勤務時間の見直し

最初から解雇を決めるのではなく、本人の事情や欠勤期間、これまでの勤務状況に応じた対応を検討することが大切です。

会社の対応を記録に残す

無断欠勤への対応では、会社がどのような対応を行ったのかを記録に残すことが非常に重要です。

次の内容は、できる限り書面やデータで残しておきましょう。

  • 欠勤が始まった日
  • 本人の勤務予定
  • 電話やメールをした日時
  • 本人への連絡内容
  • 本人や緊急連絡先からの回答
  • 出勤や状況報告を求めた内容
  • 書面を送付した日と配達状況
  • 本人から事情を聞いた内容
  • 医療機関の受診や診断書の状況
  • 業務に生じた具体的な影響
  • 会社が検討した対応内容

実際に解雇する場合は、原則として30日前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払う必要があります。

懲戒解雇であっても、当然に解雇予告や解雇予告手当が不要になるわけではありません。

解雇予告をせず、解雇予告手当も支払わないためには、労働基準監督署長から解雇予告除外認定を受ける必要があります。

無断欠勤が続くと、事業主としては早く対応を終わらせたいと考えがちです。

しかし、欠勤日数だけで判断するのではなく、本人への連絡、安否確認、欠勤理由の把握、就業規則の確認、出勤の求め、本人からの事情聴取を順番に行うことが大切です。

また、就業規則に自然退職・当然退職の規定がある場合でも、実際の状況が規定の要件に該当するかを慎重に確認しなければなりません。

会社が丁寧に対応していても、記録が残っていなければ、後からその事実を説明できないことがあります。

感情的に判断せず、対応の経過を記録しながら、段階的に進めましょう。

SAFECORE社会保険労務士事務所では、無断欠勤や勤務態度に問題がある従業員への対応、自然退職・当然退職に関する就業規則の確認、会社が残しておくべき記録の整理などについてご相談をお受けしています。

就業規則に規定がある場合でも、実際の事案に適用できるかどうかは、本人との連絡状況や欠勤理由によって異なります。解雇や退職の手続きを進める前の段階から、お気軽にご相談ください。

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