休職期間満了で自然退職にできる?会社が確認すべき5つのポイント

休職期間の確認を表すカレンダーと書類

「就業規則に『休職期間が満了したら退職』と書いてあるので、そのまま退職扱いにしてよいでしょうか」

「本人から復職可能という診断書が提出されましたが、会社としては本当に働けるのか判断できません」

私傷病で休職している従業員の休職期間が満了に近づくと、会社は復職させるのか、休職期間を延長するのか、それとも退職として取り扱うのかを判断しなければなりません。

就業規則に、休職期間満了時に復職できない場合は退職とする規定が置かれていることがあります。一般に「自然退職」や「自動退職」と呼ばれる取扱いです。

ただし、規定があるからといって、満了日が来れば機械的に退職処理をしてよいとは限りません。本人の回復状況や復職の意思、診断書の内容、配置可能な業務の有無などを確認しないまま進めると、退職の有効性をめぐる紛争につながる可能性があります。

今回は、休職期間満了による自然退職を判断する前に、会社が確認しておきたい5つのポイントを解説します。

目次

就業規則の休職・復職・退職規定を確認する

休職制度の内容は会社ごとに異なる

私傷病による休職の定義、休職期間、復職の要件などは、労働基準法で一律に定められているものではありません。基本的には、各社の就業規則や労働契約に基づいて運用されます。

もっとも、会社が休職制度を設けている場合、「休職に関する事項」は労働契約の締結時に明示すべき労働条件に含まれます。制度を設けるのであれば、対象となる事由、期間、復職手続、期間満了時の取扱いなどを、労働条件通知書や就業規則等で確認できる状態にしておく必要があります。

厚生労働省のモデル就業規則では、業務外の傷病により勤務できない場合の休職について、休職期間中に休職事由が消滅したときは原則として元の職務に復帰させ、元の職務への復帰が困難または不適当な場合には他の職務に就かせることがあるとしています。

そのうえで、休職期間が満了しても傷病が治癒せず、就業が困難な場合は、期間満了をもって退職とする規定例が示されています。

したがって、最初に確認すべきなのは、自社の就業規則に次のような事項が明確に定められているかです。

  • どのような場合に休職となるのか
  • 休職期間はいつからいつまでか
  • 休職期間を延長できるか
  • 復職の申出期限と必要書類
  • 復職の可否を誰がどのように判断するか
  • 休職期間満了時に復職できない場合の取扱い
  • 復職後に同一または類似の傷病で再び休む場合の取扱い

常時10人以上の労働者を使用する事業場には、就業規則の作成・届出義務があり、10人未満の事業場であっても、休職制度を設けて運用するのであれば、労働条件として明示するとともに、判断基準や手続を規程等にまとめておくことがトラブル防止につながります。

傷病が業務上のものではないかも確認する

私傷病休職として扱っていても、本人が長時間労働やハラスメントなど、仕事が原因で発症したと主張している場合があります。

労働基準法第19条は、業務上の負傷や疾病の療養のために休業する期間と、その後30日間について、原則として解雇を禁止しています。

業務上の傷病に当たる可能性がある場合は、通常の私傷病休職と同じように処理せず、発症までの経緯や本人の申告を確認し、個別に慎重な判断が必要です。

復職の意思と診断書の内容を適切に確認する

「復職可能」の一文だけで結論を出さない

復職を希望する従業員から、主治医による「復職可能」と記載された診断書が提出されることがあります。

診断書は重要な判断資料ですが、それだけで復職の可否が自動的に決まるわけではありません。

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、主治医の判断は日常生活における回復程度を基準としていることが多く、職場で必要とされる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないと説明しています。

会社としては、診断書に加えて、次のような点を具体的に確認します。

  • 所定の始業時刻に継続して出勤できるか
  • 所定労働時間の勤務が可能か
  • 通勤に支障はないか
  • 担当業務を安全に遂行できるか
  • 避けるべき作業や必要な就業上の配慮はあるか
  • 通院の頻度や今後の治療見込みはどうか
  • 段階的な復職が必要か

診断書の内容だけでは判断できない場合は、本人の同意を得たうえで、主治医に業務内容や勤務条件を伝え、就業上の配慮について具体的な意見を求めます。

産業医を選任している事業場では、その意見も踏まえて検討します。産業医の選任義務がない小規模事業場では、必要に応じて地域産業保健センターなどの事業場外資源を活用することも考えられます。

一方で、会社が医学的な根拠なく主治医の診断を退けることも適切ではありません。

疑問点がある場合は、本人との面談、主治医への照会、産業医等の意見などを通じて、判断材料を補うことが大切です。

健康情報は必要な範囲に限って扱う

傷病名や治療内容などの健康情報は、特に慎重な取扱いが必要な情報です。

主治医へ照会するときは、あらかじめ本人に目的を説明して同意を得るとともに、収集する情報を復職判断や就業上の配慮に必要な範囲に限定します。

上司や同僚へ本人の診断名や詳しい治療内容まで共有するのではなく、業務上必要な配慮事項に整理して伝えることが基本です。

復職可能性と配置可能な業務を具体的に検討する

元の仕事ができないだけで判断しない

自然退職の有効性を考えるうえで、特に重要なのが「復職できる状態だったか」という点です。

ここでいう復職可能性は、必ずしも傷病が完全に治り、休職前とまったく同じ働き方が直ちにできるかだけで判断されるものではありません。

片山組事件の最高裁判決は、職種や業務内容を限定せずに労働契約を締結している場合、現在の業務を十分に行えなくても、本人の能力や経験、会社の規模・業種、配置や異動の実情などを踏まえ、現実的に配置できる他の業務を行うことができ、本人もその提供を申し出ているのであれば、労務の提供があると評価され得ることを示しました。

そのため、会社は次のような点を具体的に検討する必要があります。

  • 休職前の業務にどこまで復帰できるか
  • 一時的な業務量の軽減や残業制限が可能か
  • 配置可能な軽易業務や他の業務が実際に存在するか
  • 配置転換によって復職できる可能性があるか
  • 比較的短期間で通常勤務へ戻れる見込みがあるか
  • その配慮が職場や他の従業員へ与える影響はどの程度か

もちろん、会社に存在しない仕事を新たに作ったり、長期間にわたって本来の業務とかけ離れた勤務を認めたりすることまで、一律に求められるわけではありません。

会社の規模や人員体制、業務内容などに照らして、現実に可能な範囲を検討することになります。

また、職種や業務内容を限定して採用した従業員については、職種を限定していない場合と同じ範囲の配置転換が当然に求められるわけではありません。

ただし、比較的短期間で本来の業務へ復帰できる見込みがある場合などには、一定の準備期間を設けることや、段階的な復帰、必要な教育を行うことが信義則上求められる場合があります。

重要なのは、「元の仕事を完全にできないから復職不可」と最初から結論づけるのではなく、どのような業務なら可能か、実際に配置できる仕事があるかを確認したうえで判断することです。

判断の経過を記録し、結果を書面で通知する

結論だけでなく、判断までの過程を残す

休職期間満了による自然退職は、本人の雇用が終了する重大な判断です。

後から紛争になった場合、会社がどのような情報を確認し、何を検討して結論を出したのかが重要になります。

次のような資料は、時系列で整理して保存しておきましょう。

  • 休職命令書・休職通知書
  • 就業規則を説明した記録
  • 本人とのメールや面談記録
  • 復職意思の確認書類
  • 本人から提出された診断書
  • 本人の同意を得て行った主治医への照会内容
  • 産業医等の意見
  • 復職可能な業務や配置を検討した記録
  • 会社として判断した理由
  • 本人へ交付した復職決定通知書または退職通知書

自然退職と判断する場合は、就業規則のどの条文に基づくのか、退職日がいつになるのか、復職の可否をどのように判断したのかを整理し、書面で通知します。

就業規則上は自然退職であるにもかかわらず、本人に自己都合の退職届を書かせると、退職理由をめぐる新たな争いを招くおそれがあります。

会社が就業規則に基づいて退職として取り扱うのであれば、その取扱いを明確に伝えることが必要です。

自然退職は「満了日が来たら終わり」ではない

就業規則に休職期間満了による自然退職の規定があり、満了時点でも就業が困難である場合には、退職として取り扱うことが考えられます。

しかし、満了日が来たという事実だけで、当然に退職の有効性が認められるとは限りません。

会社には、本人の復職意思と回復状況を確認し、主治医や産業医等の意見も踏まえながら、現実に配置可能な業務がないかを検討することが求められます。

休職制度は、働けなくなった従業員を直ちに退職させるための制度ではなく、雇用を維持しながら一定期間、回復を待つための仕組みです。

その趣旨を踏まえて手続を進めることが、従業員を守るだけでなく、会社を労務トラブルから守ることにもつながります。

まずは、自社の就業規則にある休職期間、復職要件、満了時の取扱いが明確になっているかを確認してみてください。

規定があっても実際の運用方法が決まっていなければ、休職が発生する前に、通知書や復職判定の手順まで整備しておくことが重要です。

セーフコア社会保険労務士事務所では、休職・復職に関する就業規則の確認、休職通知書等の書類整備、復職判断の進め方、従業員との面談や記録の整理について支援しています。

休職期間の満了が迫ってから対応を始めると、確認できる事項や選択肢が限られることがあります。対応に迷う場合は、早い段階でご相談ください。

※本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別事案についての法的判断を示すものではありません。実際の対応は、就業規則、労働契約、傷病の原因と状態、会社の規模や配置状況などによって異なります。

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